2日後の夜、マスタングの部屋には珍しく客の姿があった。大きな身体を縮こ
めて、ちょこんと椅子に座り、少し居心地が悪そうにしているその人物は、アー
ムストロングであった。リオールの混乱の後、中央に報告に行くというファルマ
ン少尉に同行してセントラルに来ていたのである。
マスタングは、アームストロングの話すリオールでの出来事をじっと聞いていた
。ふいに起こった地震。と同時に現れた謎の鎧軍団。そしてその鎧の軍団は突然
空中に消えてしまったこと…
「…まったく、信じがたい事ばかりでして…軍も状況を掴めないでいるようです
」
そう話を締めくくったアームストロングにマスタングは、
「このセントラルでも、リオールと同時期に地震が起こっている事を知っている
か?」
そう言って、一昨日の新聞を渡した。
「このセントラルの付近には、地震を起こす断層も、火山も存在しない。つまり
地震が起こる原因がないのだ。しかも、震源とされる位置は不明とされている。
その規模さえもだ。おかしいとは思わないか?何もない所で地震が起こるはずは
無い。あれは普通の地震だったのだろうか?」
アームストロングはそれに眼を通しながらマスタングの話を聞く。確かに地震の
記事はあるが、繊細はほとんど不明であるとしか書かれていなかった。
「リオールとセントラル…両方に共通する物は何かわかるか?」
突然のマスタングの問い掛けに、アームストロングはうーむと考え込んだ。
「…規模の大きな錬成が行われた所だということ、それから…」
「? それから?」
一瞬黙りこくったマスタングにアームストロングが次の言葉を問う。
「……エドワード・エルリック」
「!? エドワード・エルリック?」
「スカーの一件の時、あいつはリオールに居た。そしてこのセントラルで、エド
はアルフォンスを錬成するという規模の大きな錬成をした」
「しかし、それだけで二つの事柄を関連付ける事はできないと…」
「そうかもしれない、だが、大規模な錬成が行われた時、そこにはエドが居た事
は共通するとは言えないか?」
「……」
「かなりムリヤリな解釈かもしれない。だが、謎の鎧の一団といいなにかよから
ぬ事が起きようとしているような気がしてならない。それがもし、エドに関する
ことなのだとしたら、何かが起きようとしているのかもしれないと考えずにはい
られない」
「しかし、エドワード・エルリックはアルフォンス・エルリックを錬成した時に
消滅してしまったのではないのですか?」
「本当にあいつは消滅してしまったのだろうか」
「………」
錬金術の法則から言えばそれは当然の事である。だが、
「そういえば…」
ふと、アームストロングはある事を思い出した。
「?」
いぶかるマスタングに、
「いえ、今日セントラルに到着した時、駅でアルフォンス・エルリックを見掛け
たのです」
「アルフォンスを?」
「ええ… エドワードと同じコートを纏(まと)っていたので間違いないかと、し
かし、遠目でしたので、声を掛ける前に見失ってしまいまして…」
「何故セントラルに?師匠の所で錬金術を習っているのではなかったのか?」
「ええ、それが修行を終えてエドワード・エルリックを探す旅をしているとか。
リオールで会った時そう言っておりました。それにウィンリィ殿の話では、アル
フォンス・エルリックはエドワード・エルリックを見つけたと言っていたと…」
「見つけた?」
「ええ…詳しくはわかりませんがそう言っていたそうです」
アームストロングはここへ来る前にリゼンブールに電話をした時のことを話し始
めた。
『アルですか?それが居なくなっちゃって…』
電話でそう答えたのはウィンリィだった。
『アームストロングさん、どこでアルを見掛けたんですか?教えてください』
『ん…いや…居ないのならそれで…』
と、切ろうとするアームストロングに、
『居なくなる前アルが言ってたんです。兄さんを、エドを見つけたって。死んで
なかったって。迎えに行く方法を探さなきゃって。その後急に居なくなっちゃっ
て…ラースもなんです。お願いです。アルはどこに?』
そのウィンリィの必死の様子に負けてアームストロングはセントラルの駅でアル
を見掛けた事を話したのだった。
「では、アルフォンスはエドを探すために、このセントラルにやって来たという
わけか」
「さぁ、そこまでは…ですが、なんらかの手掛かりを掴んだのかもしれませんな
」
「…一体、何が起こるというのだ?」
マスタングは窓の外を眺めた。そこにはいつもと変わりないセントラルの夜景が
広がっていた。
その頃、リゼンブールでは、ウィンリィが旅支度をしていた。
「明日の朝にしたらどうだい?」
そうウィンリィを引き止めたのはピナコであった。
「ううん。少しでも早く行きたいの。今ならまだ最終の汽車に間に合うから」
「今まで通り、待っててやったらどうだい?」
「これ以上待ってばかりはもうイヤなの。私もエドを探したいの。じゃあ行って
来ます」
そう言って、ピナコを振り切るように玄関を出る。階段を降り、大きなカバンを
肩に掛け直すとウィンリィは足早に駅を目指した。