アメストリス南部、ダブリスの町。小さな町であったが活気のある町であった。駅からほどなく離れた大通りから少し入った所にイズミ夫婦が経営する肉屋があった。
その店の奥の部屋、明るい日差しが差し込む一階の一室にイズミはベットに半身を起こしていた。
「そうか。アルはエドを探しに行ったか」
ベットの脇にはウィンリィが見舞いに来ていた。アルからイズミが体調を酷く崩し寝込んでしまっていることを聞いたからだ。イズミも自分の体調が以前より良くないことを悟り、アルの修行を終えさせ一人立ちさせたのであった。
「アルはエドがどこかに居ると信じています。でも…」
「ウィンリィは信じていないのか?」
「いえ… そういうわけじゃぁ……」
ウィンリィはそう言うと、脇に置いてある大きなトランクに眼をやった。イズミの見舞いに来るだけにしては大きすぎる荷物である。イズミは俯いてしまったウィンリィから窓の外へ視線を移す。
「アルが修行を始めたばかりの頃、この町の近くにカーニバルが来たんだ」
「カーニバル?」
「そこで、不思議な占い師に会ってね。アルがその占い師の手を取るとエドの姿が見えたっていうんだ」
「え?」
「占いなんてただのまやかしに過ぎない、その時はそう思ったしアルにもそう言ったんだけどね。あの子、真剣な顔をして言うんだ『あれは間違いなく兄さんだった』ってね。ただの幻じゃないって」
ウィンリィは黙って聞いていた。
「その占い師が言うには、アルが見たものはどこかの世界のことだ、と言うんだ。アルとエドのなんらかの繋がりがあるから見る事ができたのだ、とね。エドは自分の身体を代価にアルを練成した。だからどこかに繋がりがあってもおかしくないと思うんだ。だから、私も信じてみたい」
そう言うと、今まで窓の外に向けていた視線をウィンリィに向けた。その瞳には何か一縷の望みでもいい、それを信じたいイズミの気持ちが溢れていた。
「イズミさん…」
ふっと、ウィンリィを見る、イズミの顔が緩んだ。
「ウィンリィ、…歳はいくつになったんだい?」
「え?18、です」
「…そうか。ウィンリィも随分大人になったね。」
とにっこり微笑んだ。ウィンリィは何故か気恥ずかしい気分になった。
「エドも18になるのか… あの子も大人になったろうね。背はちゃんと伸びんだろうか?」
と、苦笑いを交わす二人。この事を本人に言ったらどんな騒ぎになることやら…
「あの子は、一体今頃どこでどうしているんだろう… 元気でいるのかそれだけでも知ることができたらどんなにいいだろうね」
今度のイズミの表情には辛い気持ちが滲みでていた。会いたい、できることなら。生きているのかそれだけでも知りたい。その気持ちは皆同じなのだということをウィンリィはひしひしと感じていた。