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会場内を人を掻き分けるようにノーアが逃げている。それを、軍服を着た男達が追ってくる。何人かの人にぶつかり、
 『なんだ、お前』
 『お願い。助けて』
 『お前、ジプシーか』
 『追われているの』
 『誰かの財布に手を出したんだろう。お前達はみんな泥棒だからな』
 誰もノーアを助けようとするものはいなかった。それでもノーアは逃げるしかない。いくつかのテントの脇を抜け、エドワードのいるトラックのところまでやってきた。そこは、行き止まりのようになっている。ノーアが見回すと、トラックの荷台に置いてある何かにカバーが掛けてあるものが眼に止まった。躊躇っている暇はない。ノーアはそのカバーの下に潜り込もうとした。
 「?」
 人が来る気配に気付いたエドワードが起き上がる。
 「それ、いじらないほうがいいぜ。一応燃料セットしてあるんだから」
 その声に、ノーアが驚き振り向いた。
 「?」
 エドワードはノーアの様子にただならぬ事態を察した。そこへ、ノーアを追って来たヘスの部下達がやってきた。
 「見つけたぞ!世話かけやがって!」
 男がノーアの腕をつかんで荷台から引きずり降ろし、容赦なく平手打ちをする。
 「たすけて!」
 ノーアは、エドワードに助けを求めた。男はエドワードに気付くと、
 「このジプシーが契約を破ったんだ!」
 そう言うと、もう一度手を挙げた。ノーアが悲鳴を上げる。さすがに見ていられなくなったエドワードは、荷台から飛び降りノーアと男の間に割って入った。
 「やめなよ。一人の女に男がよってたかって」
 「話したろ。このジプシーは我々が買ったんだ。どうしようと我々の勝手だ。邪魔をするな」
 そう言うと、男達はそれぞれ銃を抜き、エドワードを取り囲んだ。どう見ても尋常な事態ではなかった。しかし、エドワードはこういう状況には慣れてしまっている。銃を向けられてもまったく動じる気配はない。
 はぁー、逆に大きな溜息をつくと、
 「まったく、久しぶりだぜ!」
 そう言って、両手をパンッと打ち鳴らす。それに驚いた男達の動きが止まった。
 「・・・・・って・・・・何も起こらないけどな!」
 エドワードは、一瞬苦笑いをすると一人の男に向かっていく。銃を奪おうとするが抵抗され逆に振り払われる。その時、相手の腕が鎧的装備を着けていることに気が付いた。
 「素手でやりあうには、ちときつそうだな」
 にやり、とエドワードは笑うと左手で右手の肘を外側へグイと折り曲げる。
 「!」
 普通の人間ではあり得ない光景に、その場の一同がたじろいだ。義肢である右肘の中にはワイヤーが収納されており、それをグイと思いっきり引っ張り出す。右肩内部ににある弾み車がそれで猛回転し、一時的にパワーアップするのだ。エドワードは右手を戻し、自分の前に差し出す。すると、右腕の前腕がグッと膨れ上がり腕を覆っていた人工皮膚の一部が飛び散り、粗い作りの義肢が露になる。それを見た相手がたじろぐ瞬間をエドワードは逃さなかった。再び突進。銃を持つ相手の腕を捕らえると、そのまま力を込める。バキバキバキッ!!捕らえた相手の機械腕が壊れる。相手の戦意を喪失させるには十分だった。混乱するヘスの部下達。エドワードは呆気にとられて立ち尽くしているノーアの腕を掴むと、自分の方に引き寄せる。すぐさま荷台のロケットをヘスの部下達に向けて倒す。
 「危ないぜ」
 エドワードはロケットに強引に点火。ゴゴゴとうなりをあげて自らを引きずるようにしてロケットは発射される。逃げ惑う男達。その気を逃さず、エドワードはノーアを連れて走り去った。ここは逃げるが勝ちである。


 ちょうどそのころ、アルフォンス達のロケットが見事に打ち上げられたところであった。歓声を上げて天高く飛んでいくロケットを見る観客達。アルフォンス達も、満足そうに見上げている。ふと、ハイデリヒの視界の片隅にエドワードが女性の手を引いて走って行く姿が映った。
 「?エドワードさん?」
 声は届かず、エドワードはテントの影に消えて行った。思わず後を追おうとした時、
 「見せてもらったよ」
 声の主は、ルドルフ・ヘス。軽く拍手しながら歩み寄ってきた。
 「ヘスさん。みんな、話したろ?オレ達のパトロンになってもいいって人だよ」
 ハイデリヒが皆にヘスを紹介する。ヨゼフ達は喜んでヘスに握手を求めた。
 「君達なら、私達の求めるものを作ってくれそうだ。是非協力してもらいたい」
 アルフォンス達が喜ぶ姿を見て、ヘスは、鷹揚に頷いた。そこに部下の一人が駆けて来て、ヘスに何事か耳打ちする。
 「・・・・・逃げられた?」


                                                                                                                 >>1-6