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カーニバル会場はすでに賑わいをみせていた。いろいろな見世物小屋、カラフルなテントが軒を連ね、メリーゴーランドなどの乗り物がある。その中に、千里眼ハヌッセンを謳う、怪しげな見世物小屋があった。ハヌッセンは、まだまだ売出し中の山師であり、おどろおどろしいポスター画がそれを示していた。ハヌッセンは、鏡の前に座り、髪を撫で付け整えている。黒い燕尾服に蝶ネクタイ。それとは到底不釣合いな不気味なメイクを顔にほどこしている。そこに二人のロマの女性が一人の美少女を連れてやってきた。少し怯えた様子のその少女は、歳は19か20歳。その瞳には不思議な輝きが宿る少女だった。
 「君がノーアか。随分探したよ。二人ともご苦労だった」
 そう言うと、女達に札束を差し出した。
 「フランスのフランだ。ドイツのマルクなんか紙屑より安いからな」
 女達は金を受け取ると、臆面もなくその場で数え始め、そして、十分な金額があることを確かめると、少女を置いて出ていこうとした。
 「待って、私は・・・」
 そう言って、一人のロマの女の手を掴む。と同時に、ノーアの表情が凍りついた。
 「あんたはここにいるの」
 女は吐き捨てるようにそう言った。
 「そう・・・私、売られたのね」
 「人の心を盗み見て、本当にあんたは気味の悪い子だわ」
 女は不気味な物を見るような目つきでノーアを睨み、掴まれた腕を振り払うと、部屋を出て行った。残されたノーアはひどく傷ついた顔をし、眼からは今にも涙がこぼれそうだ。そんなノーアをハヌッセンは満足げに見つめている。
 「触れただけで相手の心を覗き見ることができる。君の千里眼は本物だ。私のは単なるマジックだがね」
 ノーアは何か決心したようにハヌッセンを睨んだ。
 「その力を借りたいという方たちがいるのだよ」
 と、扉が開き、数名の軍服を着た男達が入ってきた。ルドルフ・ヘスの部下達である。
 「ちょうどよいところでした。お探しの少女が来たところです。ヘス少尉は?」
 「少尉は外におられる。その女か?」
 男はノーアに近寄るとグイと強引にノーアの顎を掴み上げた。達観したように兵士を見ていたノーアだったが、その顔がだんだん引きつってゆく。ノーアが男の中に見た情景は、ノーアには理解しがたいものだった。大きな屋敷、不気味な鎧達、あちこちに描かれている見たこともない図形。そしてなによりも、エッカルトの射すくめる視線に、ノーアは一瞬恐怖を感じた。瞬間的にノーアは掴まれている顎を振り払い、飛びのく。その顔は恐怖で少し青ざめている。
 「君?」
 ノーアは、制止する兵士達から逃れ部屋を飛び出した。



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