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急速に復興し発展を遂げているリオールの町。あちらこちらで建設ラッシュが起こっていた。スカーによって一瞬のうちに砂漠となってしまった面影は今はもう全く無かった。今では鉄道も乗り入れているリオールの駅にアルは降り立った。
「ここがリオールか…」
もちろん以前訪れたという記憶は無かった。新しく復興したとはいっても、アルにとっては始めて訪れる町であった。アルは当てもなく歩き出した。
街の中央広場では、演説台の上でマイク片手にアームストロングが演説を行っている真っ最中であった。
「我がアームストロング財団は前面的にリオールの街の復興に協力していく考えであります。東方を代表する新しい時代の都市作りを目指してまいりましょう!」
アームストロングお得意の大袈裟な身振り手振りを交えての演説に大きな歓声が上がった。アームストロングはあの事件の後軍を辞め、家業の一つである財団を運営し、リオールの町の復興に力を注いでいたのである。
アームストロングが広場の隅で地面を激しく叩きつけると、まばゆいばかりの練成反応の光とともにたちまちお洒落なドリンクバーが練成されていく。が、その屋根にはムキムキの金ピカのアームストロングのでかい像付きという一般常識ではあまり嬉しくないおまけ付きであった。
「この店はあなたに差し上げよう」
店主の両肩を力強く叩くと満面の笑みを湛えてアームストロングは言った。
「あ、結構なお手前で……」
そう礼を言いつつも、その店主の顔は明らかに引き攣っていた。アームストロングがその場を離れるとがっくりとうな垂れてしまった店主を慰めに皆が集まってくる。こんな光景が実は結構あちこちで繰り返されていたのであった。
アームストロングが広場から立ち去ろうとした時だった。足元に微かな振動を感じたかと思ったら徐々に大きな揺れへと変わっていく。
「!?」
アームストロングが驚き広場の中心を見ると、石畳に覆われた広場に光の線が次々に走り次第にそれはある図形を描いてゆく。それを見て眼を剥くアームストロング。
「これは!錬成陣!?」
広場にはまだ数人の子供達が取り残されていて、それを次々と抱き上げるロゼの姿があった。それを手伝いにアームストロングが駆け寄る。
「錬金術で滅んだこの町で、今度は一体何が起こるのですか?」
横に来たアームストロングにロゼは問い掛けた。だが、それはアームストロングにも予想ができなかった。子供達を避難させアームストロングが再び広場を振り返ると、錬成陣が描かれ終わるところであった。練成陣が完成すると、陣の内側が崩れ始めすり鉢上に地面が陥没を始め、その割れた地面の間から這い出てくるように鎧の軍団が這い出てくるのが見えた。それを見て人々は逃げ惑う。
「一体どこから現れているのだ?」
驚きながらも錬金術で砲弾を練成し、応戦を始めるアームストロング。だが多勢に無勢、余りの数の多さにたいした効果が無かった。見る見るうちに広場は鎧にの軍団に覆い尽くされてしまった。鎧達はまるで狂ったように暴れていた。統率された攻撃ではなく、もうめちゃくちゃだ。この状況をどう打開すればよいかアームストロングが必死に考えていると、突然突風が吹き荒れた。それは見る見るうちに小さな竜巻となり鎧達を巻き込んでいく。一瞬の出来事に驚き見るアームストロング達。ロゼはその竜巻の向こう側に赤いコートを羽織った一人の少年を見つけた。
『エド?』
深くフードを被ったその少年の顔は見えなかった。だが、その出で立ちは以前のエドワードそのものであったのだ。
その少年が両手を合わせ叩くと、新たに竜巻が巻き起こる。
「竜巻を練成した?!」
突風でその少年のフードが外れる。ロゼにはその顔に見覚えがあった。
「アル?!」
驚き見ているアームストロング。見る間に鎧達は巻き上げられ、広場の中心に山と積まれていった。
中央都市セントラル。ここでも地震が起こっていた。大きな揺れではなかったが、議会場は一時騒然となった。今は議会場の書記役になったシェスが不安そうに辺りを見回していた。中央軍部も同時に慌しい空気に包まれていた。リオールとの通信が途絶えていたのだ。通信士が必死に呼び掛けるが応答がない。
「リオールでも地震が?」
慌てた様子で入ってきたのは、大尉となったリザ・ホークアイであった。側にはマリア・ロスの姿もある。
「未確認ですが多数の鎧兵が現れたとの報告も入っています」
「鎧兵?一体どこから?」
問いただすリザに、マリア・ロスは首を横に振るだけであった。

その頃リオールでは鎧兵との戦いが繰り広げられていた。鎧たちがアルに向かって押し寄せてゆく。
「む、いかん」
アームストロングがアルの身の危険を感じ援護しようと身構えた時、ロゼ達に向かってアルはちょっと笑顔を見せると、両の手を合わせ2体の鎧に手をあてる。と、その鎧達が一瞬光ったかと思うと、クルリと向きを変え本来は仲間であるはずの鎧達に攻撃を加え始める。アルはそれを少し離れて見守っていた。そこへアームストロングとロゼが駆け寄ってきた。
「久しいな、アルフォンス・エルリック。これは一体どうゆうことなのだ?」
アームストロングに声を掛けられ振り返ったアルは一瞬戸惑った顔をする。
「アームストロング少佐よ。前にお会いしたことがあるでしょ?」
ロゼにそう言われ、しばし思い出していたのだろう、次第にその表情は明るくなっていく。
「ああ、以前リゼンブールに来ていただきましたよね。それに旅をしていた頃はお世話になっていたって聞きました」
そう言って、ペコリと頭を下げた。まるで他人行儀なその挨拶にアームストロングは寂しそうな表情を見せた。再び自分の背後に鎧が近寄って来たのに気付いたアルは両手を合わせると、鎧に触れる。錬成光が納まると、アルに触れられた鎧は先程の鎧と同様仲間に攻撃を開始する。
「僕の魂の一部を移して、彼らをコントロールしています」
「お主の魂を移す?」
アルはニコリと笑ってアームストロングを見ると、
「なんだか僕の魂って、この身体から離れ易いみたいなんです」
そう言って、鎧の一団に向かっていった。魂を移した鎧と一緒に他の鎧を次々に倒してゆく。その後姿はまるで…
「まるで、エドワードが鎧の姿の時のアルフォンスを連れておるようだな…」
アームストロングは複雑な表情をしてそう言った。
「まだ記憶が戻っていないんですね。エドと旅した4年分」
二人は複雑な思いで、戦うアルの後姿を見つめていた。

軍が到着し、騒ぎはやっと納まった。動かなくなった鎧達は広場の中央に山と積まれ、その周りで軍による検証が行われていた。鎧の顔の部分をこじ開け覗き込んでいた軍人の顔が酷く歪む。と、同時にガシャンと閉じられる。そんな光景が幾度となく繰り返されていた。それを、離れたところからアームストロングは見ていた。その側へ今は東部方面司令部に配属になっているファルマンが近寄ってきて敬礼する。
「敬礼はいらんよ、ファルマン殿。我輩はもう軍を離れている」
「あ、申し訳ありません、アームストロング中佐」
と、つい言ってしまうファルマンに苦笑いを向けるアームストロング、ファルマンも言ってしまってからバツの悪そうな顔をしお互い苦笑する。
「一体これはどうゆうことなのだ」
「わかりません。中身は人間と思われますが、損傷がひどく最初から死亡していたと思われます」
「最初から死亡と?では何故攻撃ができたのだ?」
首を振るファルマン。
「見当もつきません… ですが、最初から死亡していたことは確かかと…」
突然、わっと声が上がる。二人が見ると、一個の鎧が突然立ち上がり暴れ始めていた。が、それも一瞬のことで、鎧は再びひっくり返るように崩れ折れ、破損した一部から内部の様子が見て取れる。
「随分複雑な物ですね。機械鎧でしょうか?」
「いや、中に人間が入っていたのなら機械鎧とは違う物だろう」
「では、一体どこの物なのでしょうか…」
「………」
アームストロングにも皆目見当もつかなかった。これらの鎧は果たしてどこから現れなんの目的で現れたのだろうか。

広場の片隅では、アルが小さな子供達におもちゃを錬成してやっていた。子供達は欲しいおもちゃを錬成してもらうと大喜びで遊び始めた。
「アル、初めて見た時エドかと思っちゃった」
ロゼが言いにくそうに言う。
「このコート…」
「うん。兄さんのなんだ。この手袋も。ほらここに錬成陣が書いてあって、両手を合わせると練成ができるようにしたんだ。兄さんは錬成陣無しで両手を合わせるだけで錬成できたみたいだけど、僕にはまだ無理だから」
そう言ってアルは笑った。
「格好だけでも真似すれば何か手掛かりが掴めるんじゃないかなって思ったんだ」
「アル… エドを探しているの?」
「うん…」
「エドはあなたを錬成して代わりに消えてしまったのよ?だから…」
「確かに」
ロゼの言葉を遮る様にアルは強い口調で言った。
「確かに、兄さんは自分の身体を代価にして僕を錬成してくれた。だから僕の身体は兄さんの身体からできているのかもしれない。けど、それでも信じたいんだ。兄さんはきっとどこかに居るって…」
「アル…」
アルは自分の両肩を両手で掴み抱え込んだ。まるで自分で自分を抱きしめるように。
「自分のこの眼で確かめるまでは信じられないんだ。なんでもいい。確かめたいんだ」
突然わっと広場の方で声が上がった。はっとして二人が見ると、積み上げられていた鎧の上空に赤く光る空間が生まれていた。見る間に鎧はその空間に引き込まれてゆく。それを呆気にとられたように見つめているファルマンとアームストロング。
「引き込まれていく…」
「一体どこに引き込まれていくんだ?」
そこへアルが駆け込んできて勢いよくジャンプすると、空中に浮かんだ鎧にしがみ付いた。その鎧は昔アルが鎧の姿になっていた時とよく似た鎧であった。アルをくっつけたまま空間に引きずり込まれてゆく鎧。それでもアルは離そうとしなかった。そんなアルにロゼが組み付きひっぱり下ろそうとする。
「アル!あなたまで消えちゃう!!」
ロゼは渾身の力を込めてアルを引っ張った。あの日エドと最後に会ったのは自分だ。あの時無理にでもエドを連れて帰っていれば… そんな後悔に似た気持ちがロゼの心にはあった。エドを失い、そしてまたアルまで消えてしまったら…ロゼはまたあの時の後悔をしたくなかった。力いっぱい引っ張るとようやくアルの身体が鎧から外れ2人とも地面に落下した。アルが慌てて上半身を起こすと、アルが組み付いていた鎧が吸い込まれ、赤く光った空間も消えていくところであった。今はもう何事も無かったかのような空間をアルは呆然と見つめていた。